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スキンケアと湿疹

アトピー性皮膚炎の治療目標は、「症状がない状態にする、あるいは症状が少しあっても日常生活に支障がない。」「急には悪くならずに、もし悪くなってもすぐ良くなる。」ことです。治療の目標は治癒ではなく、”普通の治療で普通の生活ができる”ことです。そうしていれば、知らずしらずのうちにアトピー性皮膚炎をコントロールできるようになっていきます。
*この解説は「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(日本皮膚科学会)」を参考にしています。

●かゆみのコントロールがとても大切です。

痒みがあると、ついつい掻いてしまいます。ひりひりするまで掻いた皮膚では、バリア機能が失われ、アレルギーを起こす抗原(=アレルゲン)も入りやすくなります。ちょっとしたことが皮膚への刺激になり、かゆみ神経が過剰に反応して広い範囲を掻いてしまい、皮膚のダメージが広がります。

●まずスキンケアからはじめましょう。
【入浴】
  • 入浴はぬるめの湯で短時間にしましょう(シャワー浴のほうがかゆみは出にくいです)。
  • ほてりを感じる沐浴剤や入浴剤は避けましょう。
  • 汗や汚れは速やかに洗い落します。毎日の入浴やシャワーが大切で皮膚表面の細菌の繁殖を防ぎます。シャワーは1日数回のこともありますが石鹸の使用は1日1回で良いです。
  • 石鹸やシャンプーはよく泡立てて、素手や柔らかいタオルで丁寧に洗い、残らないように十分すすぎます(ナイロンタオルで強くこするのは良くありません)。
  • 掻き壊した部分も洗います。脂のたまりやすい眉間、小鼻のわきや、汗のたまりやすいわきの下や首、関節の内側などを中心に洗い、他の部位はさっと汚れを落とす程度にしましょう。
  • 入浴からあがるときに水をかぶると体表温度が下がり痒みが治まることもあります。
  • 洗浄力の強すぎる石鹸やシャンプーは避けて、入浴後はすぐ保湿剤を塗って乾燥を予防しましょう。体に合えば市販薬でもかまいません。
【環境、衣類、洗濯】
  • ウールやチクチクする素材は避けて、綿100%の刺激の少ない衣類や寝具を選びましょう。
  • お母さんの衣服も同様に選びましょう(赤ちゃんが顔をこすりつけます)。
  • 室内の清掃や適当な温度と湿度も大切です。
  • 新しい肌着は使う前に水洗いしてチクチクしないようにします。洗剤では界面活性剤の少ないもの、液体洗剤ですすぎ落ちが良くて繊維を傷つけないタイプが良いでしょう。
  • 爪は短く切り、引っ掻きによる皮膚のダメージを防ぎましょう。
  • 引っ掻き防止のためにガーゼ・包帯・ネット、筒状の包帯も利用できます。
  • 寝る時に長袖・長ズボン・手袋を着用すると、直接爪で引っ掻かなくてすみます。
【保湿】

アトピー性皮膚炎では一見正常に見える皮膚も多くはドライスキンの状態で、弱い痒みはあることが多いです。ドライスキンでは皮膚のバリア機能が低下しているので、ちょっとした刺激、汗やよごれでかゆみが出て、引っ掻いて皮膚炎を起こします。汗やよごれを落として皮膚を清潔に保つためのシャワー浴、涼しい下着や刺激の少ない衣服の工夫、自分にあった保湿外用薬を使いましょう。日常のスキンケアによってドライスキンのメンテナンスをすることがいちばん重要です。

保湿外用剤は多めにとり、手のひらを使って広い範囲に塗りのばします。皮膚のしわは体の軸に垂直なので、しわに沿って塗ってください。皮膚炎がないからといって保湿剤もやめると皮膚が乾燥して湿疹を再発してしまいます。1日1回は必ず保湿剤を塗りましょう(体が湿っているうちに塗ると保湿外用剤が体の表面の水分を閉じ込めるので入浴後が最適です)。朝にシャワーができないときは霧吹きで皮膚に水分を与えてから保湿することも効果的です。皮膚炎が悪化したら保湿剤だけにたよらず痒みが強くなる前にステロイド外用剤などを使って皮膚炎を早期に抑えましょう。そのほうがステロイド外用薬を少量しか使わずにすみ、結果として副作用も心配せずにすみます。

保湿外用薬にはいろいろな種類があります。具体的な選択は、皮膚の状態に合わせて指示してもらいましょう。市販のものでも効果が良ければかまいません。保湿外用薬には、軟膏、クリームやローションなどあります。夏は保湿軟膏がベタついて気持ち悪い感じがする場合もあります。クリームやローションはベタつきが少ないです。
保湿剤の量の目安は
1)軟膏だと大人の人差し指第一関節の長さ
2)ローションだと1円玉大の量を手のひら2枚分くらい
に塗ります。塗ったところにティッシュがはりつく、あるいは皮膚がテカって見える程度塗ります(ベタベタくらいがちょうど良いです!)。

【保湿外用剤の種類と特色】
保湿外用剤 長所 短所
油脂性軟膏
(白色ワセリン、プロペト、サンホワイト、プラスチベース、亜鉛華単軟膏、親水軟膏、アズノール軟膏)
保湿外用薬の基本
安価で刺激感もほとんどない
ベタつく使用感が好まれない場合がある
尿素クリーム、ローション(ウレパール、ケラチナミン、パスタロンなど) 保湿効果が高くベタつきが少ない 皮膚炎の部位に塗ると刺激がある場合がある
ヘパリン類似物質(ヒルドイド、ヒルドイドソフト、ヒルドイドローション) 保湿効果が高くベタつきが少ない 。塗りのばしやすい 種類によりわずかなにおいがある
セラミド(キュレル、AKマイルドクリーム) 角質細胞間脂質で、皮膚本来の保湿機能を担っている物質 高価で保険処方はできない。
その他(ユベラ軟膏、ザーネ軟膏、オリーブ油) 比較的ベタつきが少ない 製剤で異なる

 

●食事

香辛料などの刺激物、チョコレート・コーヒー・砂糖・脂肪分などがかゆみを悪化させる場合があります。個人差がありますので、思い当たる場合は控えてください。

乳幼児の場合は食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因や悪化因子のことがあります。しかし過剰な食物除去はお子様にも良くないので、検査や症状を診て必要最小限の除去がすすめられています。アトピー性皮膚炎の原因には多くの因子が関係しています。アレルゲン除去は症状を改善できることもある治療法ですが、それだけでは治りません。適切なスキンケアと外用療法が最も大切です。

●外用薬(ステロイド外用薬の使い方)
【使用量の目安】

軟膏の場合は、大人の人差し指の先端から第一関節までの長さをチューブから押し出した量(だいたい0.5g)を、ローションの場合には、1円玉くらいの大きさの量を大人の手のひら2枚分に塗ります。

塗り始めて3〜4日で赤みやかゆみは治まります。赤みがとれても、指でつまんでまだ硬いところは、やわらかくなるまで10日から2週間くらいは塗り続けてください。2週間たつと、塗る量はずいぶん少なくなります。かゆみが強いときは1日2回のシャワー(石鹸の使用は1回)、そして保湿剤の後にステロイド外用薬の適量を重ねて塗ります。

ステロイド外用薬は、強い炎症を起こしているところ(赤くなっているところ、引っ掻いて皮膚がゴワゴワ硬くなっているところ、かゆみが強いところ)に塗ります。保湿剤を1日2回使用し、その上から湿疹の部分にステロイドを塗ります。弱めのステロイド外用薬の場合に最初は1日2回塗ってください。1日1回でよいか、あるいは何回か塗る必要があるか皮膚の状態と使用する外用薬の強さを考えて決めるので相談してください。

アトピー皮膚炎の薬物療法は対症療法(症状を抑えるための治療)です。治療をすべて中止すれば、当然悪化しますし、治療前よりも悪化してしまうこともあります。

症状の強い時は適量のステロイド外用薬をしっかり塗り、症状が軽快したら保湿を主として、ステロイド外用薬やプロトピック軟膏はその日かゆかったところに1日1回塗ります。再び強い症状がでてきたら、適量のステロイド外用薬をしっかり塗ります。症状の軽い期間が延びてくると、ステロイドの使用量はとても少なくなってきます。

グラフ

【ステロイドの副作用が心配な方へ】

通常の使用量ではステロイド外用薬の副作用を過度に心配する必要はありません。大切なことは、ステロイド外用薬、保湿外用薬を上手に使い分けて症状をコントロールし、かゆみがない落ち着いた状態を維持することです。そうすればお薬の使用量は減ってきます。もし、1ヶ月間のステロイド外用薬の使用量が2歳未満で15g(3本)以上、2歳以上13歳未満で20g以上、13歳以上で50g以上が続く場合には、副作用がでていないかどうか主治医にしっかりとみてもらいましょう。ほとんどの副作用は、ステロイド外用薬の使用量が少なくなるともとの状態に回復します。

●かゆみ止め

現在、手に入るかゆみ止めの飲み薬は、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬と呼ばれるものです。どちらも、かゆみを起こすヒスタミンという体内の物質を主に抑えることで働きます。薬によっては、その他に炎症を抑える力を持つものもありますし、副作用で眠気を感じるものもあります。主治医と相談しながら、自分に一番合ったかゆみ止めを見つけるようにしましょう。これらの薬を飲むことによって皮膚炎のかゆみをある程度やわらげることができますが、止めることはできません。アトピー性皮膚炎のかゆみには、ヒスタミンだけではなく、他のいろいろなものが関与しているからです。かゆみ止めの飲み薬を、ステロイド外用薬などの外用薬と組み合わせることによって、より強いかゆみの抑制効果を発揮することができます。

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